
「パームフリー」とは? 身体にも環境にも悪影響を及ぼすパーム油の実態
そもそもパーム油って?
パーム油は、「アブラヤシ」という植物から採れる植物油です。アブラヤシの果肉からはパルミチン酸、種から取れるパーム核油には飽和脂肪酸という成分が含まれており、どちらも多くの製品に使用されています。
アブラヤシは1年を通して実が成るので面積当たりの収穫量が他の植物油原料よりもはるかに多く、大豆油やなたね油と比べると約10倍もの生産量があります。そのため価格も他の植物油脂より安く、価格と供給がどちらも安定しているため、世界中の国がパーム油を輸入しています。
パーム油が使用されている製品
山火事、地球温暖化、環境破壊。パーム油は人体への悪影響だけじゃない。

パーム油の原料となるアブラヤシは赤道直下の熱帯地方のみで生産されますが、熱帯雨林と重なっているので、アブラヤシ農園を開発するためには熱帯雨林を伐採しなければなりません。ボルネオは、かつて1500万年以上も守られた低地熱帯雨林が広がっていましたが、アブラヤシ農園が開発され、わずか50年でボルネオ全体で40%もの面積が消失しました。森林破壊の排水により乾燥化が進み、甚大な火災被害をもたらしています。
他にも、大規模なアブラヤシ農園による環境への影響として、温室ガス排出や砂漠化なども挙げられています。マレーシアのサラワク州、パプアニューギニア、インドネシアのスマトラ島は、アブラヤシ農園による河川の水質汚染が深刻で、地元住民の健康と生活を脅かしています。
パーム油の9割がインドネシア、マレーシアで生産されています。かつてその自然豊かな大地にはたくさんの動物が住んでいましたが、大規模な森林伐採によって多くの動物が森から姿を消しました。ボルネオ島のオランウータンは森林伐採が原因で、この100年で90%も減少しています。
住処を失った動物たちは絶滅の危機に瀕します。人間のエゴで森林が伐採され生息地を失い農園に侵入した動物は、害獣として駆除されてしまうという悲しい現実が起こっているのです。
アブラヤシ農園の開発により地域住民が住む場所を失い、土地の権利をめぐる紛争に発展。また、農園で働く人々は低賃金で厳しいノルマを課せられるほか、子どもが労働しているといった実態があります。
この悲惨なアブラヤシ農園の現状を変えるために、持続可能なパーム油のための「RSPO」という基準が設けられました。これは、パーム油産業をめぐる7つのセクターの関係者(パーム油生産業、搾油・貿易業、消費者製品製造業、小売業、銀行・投資会社、環境NGO、社会・開発系NGO)の全ての基準をクリアした、パーム油に付けられる認証マークです。パーム油がどのルートで製品化されているのかを明確にする国際的なルールです。みなさんが、サスティナブルでエシカルな方法で製造されたパーム油を使用した製品を選ぶ時ば、この基準をクリアしているかどうかが重要な判断基準となるでしょう。
シャンプーに多用されるパーム油。持続可能な製品を選ぶ。これからの未来のこと
参考文献:
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2020/07/post-201881.html
https://www.bctj.jp/3minutes-palmoil/
https://ourworld.unu.edu/jp/bali-declaration-calls-for-palm-oil-justice
https://cosmetic-ingredients.org/base/9328/module=perpetual_scroll_0&pgtype=article&campaign=2182659
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